タキビエント

July 1, 2024

SHIROIYA HOTEL vol.2 〈白井屋ザ・レストラン〉でノンアルコールペアリングを

江戸時代から300年以上続いた老舗〈白井屋旅館〉が改装され、アートホテルとして新たに生まれ変わった〈白井屋ホテル〉。前編では、ホテルに散りばめられたアートや別棟に用意されたサウナ、そして地元の食材を使った〈白井屋ザ・ベーカリー〉についてご紹介しました。

後編は、2日目のお昼に伺った〈白井屋ザ・レストラン〉について。地元の郷土料理をフレンチへとアレンジした創造性豊かなコース料理と、それに合わせた独創的なノンアルコールドリンクのペアリングをご紹介しようと思います。

  1. ブリア・サヴァランの言葉とノンアルコールという提案
  2. 郷土料理に通ずるフレンチとペアリング
  3. まとめ

ブリア・サヴァランの言葉とノンアルコールという提案

今回は2日目のお昼に伺いました。席に着くとテーブルにはこちらの紙が。食事とのペアリングとして、アルコールとノンアルコールが用意されているようです。ペアリングについては予約をしていなかったのですが、「ノンアルコール、面白そうだな。」ということでお願いしてみることに。当日の注文も快く受け付けてくださいました。

そしてこの紙の裏には、〈白井屋ザ・レストラン〉が大事にしているというフランスの美食家ブリア・サヴァランの言葉が書いてありました。

 

Convier quelqu’un, c’est se charger de son bonheur pendant tout le temps qu’il est sous notre toit.

Brillat-Savarin

 

「だれかを食事に招くということは、その人が自分の家にいる間じゅう、その幸福を引き受けることである」という意味だそうです。

期待が膨らむ中、コースが始まります。

郷土料理に通ずるフレンチとペアリング

洋梨と煎茶と組み合わせたドリンク

まず初めに提供されたのがこちら。洋梨の甘さと煎茶の苦味が品よく調和し、今まで経験したことのない組み合わせに一杯目から驚かされました。早速飲み切るのがもったいない気持ちになってしまいます。

南瓜のタルト、2種のチーズ(白カビ、カチョカバロ)

アミューズには、2種のチーズが添えられたカボチャのタルト。

群馬の郷土料理〈おきりこみ〉がフレンチに生まれ変わる

こちらは群馬の郷土料理〈おきりこみ〉と呼ばれる煮込み料理をフレンチとしてアレンジした一品。地元の根菜とうどんのムースが入った器に目の前で鰹出汁が注がれます。やさしいお出汁の中にも、上に浮かぶ黒色の香味オイルが香ばしさを与えていてとっても美味しい。

ミネラルウォーターを注文すると、こちらのボトルが。利根川の源流から採水された〈みなかみ水〉でした。

別添えで提供されたレモンヴァーベナを浮かべる

次の一品が来る前に提供されたのがこちら。確かレモン系だったと思いますが、さっぱりとしたドリンクでした。石の上に乗っているのは、レモンヴァーベナ。こちらをグラスに浮かべ、香りとともに楽しみます。

上州地鶏のスクランブルエッグとトリュフ風味の玉葱ソテーのエッグサンド

パンも卵もふんわりなエッグサンド。パンは〈白井屋ザ・ベーカリー〉のものだそうです。舌に残ったトリュフの風味をぺアリングのドリンクがさらりと流してくれて、ペロリでした。

こちらはエッグサンドと一緒にいただく一品。なんだったかな、すみません。確かピクルスのようなものだった気がします。ご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお寄せください。

赤城牛のローストは藁の燻製で仕上げる

本日のメインは、群馬のブランド牛〈赤城牛〉のロースト。焼き上がった後に藁で燻して香りづけして仕上げます。

トマトの赤みを抜いて緑茶のタンニンを移している

こちらは最も印象的だったドリンクの一つ。まずドライトマトが浮いたビジュアルにワクワクします。ソムリエの方がバニラエッセンスを3滴ほど垂らし、仕上げてくださいました。トマトを発酵させて赤みを抜いたエキスを抽出し、さらに緑茶のタンニンを移しているそうです。もはや化学の領域。

ニジマスとキャベツ、ベーコンのミルフィーユ仕立て

海なし県の群馬ですが、お魚料理も用意されていました。ホウレンソウのソースとハーブのオイルが非常に綺麗な色味。

3種のニンジンのパウダーアイス

真っ白な器に盛り付けられた鮮やかな色のパウダーアイスはニンジンから作られているということで、これもまた驚きです。少しずつ溶けて赤や黄色が混じり、器に滲んでいく様子はまるで水彩画のようです。

ヒハツの実をバーナーで炙り、グラスの中に香りを移す

小さな松ぼっくりのような、乾燥した実が出てきました。これはヒハツの実と言って、ロングペッパーとも呼ばれる胡椒の一種。これをバーナーで炙り、グラスの中に香りを移していきます。メインの赤城牛のローストに合わせた一杯の下準備です。

赤城牛のロースト

先ほど藁で香り付けしていた赤城牛が、器に盛り付けられてきました。ここでヒハツの実の香りを移したワイングラスにザクロのドリンクが注がれます。

ヒハツの実の香りによって赤ワインのタンニン感を表現しているとのことで、メインの赤城牛のローストと合わせると、なるほどノンアルコールながらも赤ワインを飲んでいるかのような気分になりました。

シャインマスカットとブランマンジェ、白ワインのスープとミントのオイル

メインディッシュを食べ終えた後、口の中をクールダウンしてくれたシャインマスカットたち。

クレームブリュレの焼き饅頭仕立てにハーブティーを合わせて

そして最後は、群馬の郷土料理〈焼き饅頭〉をベースにしたブリュレとハーブティーで締めくくります。

まとめ

以上、〈白井屋ザ・レストラン〉で体験したフレンチとノンアルコールペアリングについてご紹介しました。

面白そうだからと、当日何も知らないままお願いしたノンアルコールペアリングでしたが、これだけ実験的で創造性豊かなドリンクの数々が提供されるのは嬉しいサプライズでした。ノンアルコールドリンクの奥深さを感じましたし、この感動を広く皆さんにも伝えたいとも思いました。

そして、もう一つ。食事やドリンクはもちろん美味しかったのですが、ソムリエの方が説明する際の語調や言葉のチョイス、そして所作までもが美しく、このレストランでの食体験を形作っているようでした。

というわけで、〈白井屋ザ・レストラン〉に訪れた際は、ぜひノンアルコールペアリングを。

なお、現在はランチコースはなく、ディナーコースのみとなっているようです。

 

〈白井屋ザ・レストラン〉

ディナー

金・土・祝前日(2部制)
17:00-19:30
20:00-22:30

月-木・日・祝日
18:00-22:00 (最終入店 19:30)

年中無休
※要予約

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