タキビエント

June 22, 2024

SHIROIYA HOTEL vol.1 〈白井屋ホテル〉で楽しむ現代アートとサウナとパン

Casa Brutusに載っていたのを見て、いつか行ってみたいなと思っていたんです。なぜ行きたいと思ったのか。それは金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》でも知られるレアンドロ・エルリッヒ氏の作品がホテルと一体となっていると知り、一度見てみたいと思ったから。金沢は私が学生時代を過ごしていた街。彼の作品が身近にあったため、単純に興味がありました。

そしてご縁もあり、2023年の冬に訪れることに。前橋の街を歩いてみると、至るところで開発が進んでおり、白井屋ホテルを中心に街全体が活性化に動いている様子でした。今回は前編と後編に渡って、撮った写真たちと一緒に滞在の様子をご紹介しようと思います。

  1. 前橋市に生まれた異色のアートホテルへ
  2. 白井屋ホテルの仕掛人とその壮大なビジョンとは
  3. 現代を代表する芸術家によりデザインされた客室と作品たち
  4. 完全予約制のプライベートサウナも
  5. 地元の人々にも愛される白井屋ザ・ベーカリー
  6. 白井屋ホテルで新たな宿泊体験を

前橋市に生まれた異色のアートホテルへ

《残照》蜷川実花作

群馬県前橋市にある白井屋ホテルは、江戸時代から300年以上続いた〈白井屋旅館〉が改装され生まれ変わり、2020年12月に開業したホテル。古い建物の魅力を残しつつ、現代的なデザインが取り入れられています。

フロントに入ってすぐ目に入ったのは、鮮やかな花々の作品。この色使いから作者が思い浮かぶ方もいるのではないでしょうか。こちらは日本を代表する写真家であり、映画監督としても活躍される蜷川実花氏による作品《残照》。

⽣命のサイクル、新たな再⽣、繁栄と衰退、明と暗、⼈⽣や世界の移ろいの無常感など、花をモチーフに表現した立体作品となっています。近隣の市営美術館で開催されていた期間展との連動企画として制作された作品だそうで、期間限定で白井屋ホテルのフロントロビーに展示されていました。

開放的な空間に螺旋階段や柱、上階まで伸びる植物が巡っている

〈ヘリテージタワー〉と称される本館は、天井が4階まで取り払われた開放的な空間。螺旋階段や柱、上階まで伸びる植物が縦横無尽に内部を巡り、有機的な印象でした。

白井屋ホテルへは都内から車で2時間ほどのアクセスですが、今回は途中〈臨江閣〉に寄り道したりと、のんびりドライブ。周辺のこともまた改めて記事にできればと思います。

白井屋ホテルの仕掛人とその壮大なビジョンとは

白井屋ホテルの建物正面のペイントは今は亡きローレンス・ウィナー氏が手がけたタイポグラフィーアート

白井屋ホテルとアイウェアブランドの〈JINS〉。一見すると関連性のない二者ですが、ホテルの開業を実現したのは、意外にも株式会社ジンズホールディングス代表の田中仁氏でした。田中仁氏は白井屋ホテルの再生プロジェクトの中心的な存在であり、このホテルのリノベーションに多額の投資を行いました。

田中仁氏は前橋市出身であり、地元の経済や文化の発展に強い関心を持っています。彼のビジョンは、白井屋ホテルを通じて前橋市を活性化し、観光客や地元住民にとって魅力的な場所にすること。ホテルの再生プロジェクトは、地域再生や文化発信の一環として、彼のリーダーシップと資金援助により実現しました。

また、田中仁氏の感性やクリエイティビティがホテルのデザインやコンセプトに反映されており、白井屋ホテルは彼の思い描く「地元に根ざした独自の魅力を持つホテル」として多くの人々に親しまれています。

現代を代表する芸術家によりデザインされた客室と作品たち

白井屋ホテルには17の客室があり、その中でも4つのスペシャルルームが話題となっています。ジャスパー・モリソン、ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、藤本壮介がそれぞれ内装設計を手がけた部屋は、どれも唯一無二の空間。

今回泊まったのは、そのスペシャルルームではなくデラックスルームでしたが、こちらも白井屋ホテル全体の設計を手がけた藤本壮介氏によるデザイン。内装はもちろん、洗練された家具や質の高いアメニティが用意されており、居心地のよい空間でした。

《ライティング・パイプ》レアンドロ・エルリッヒ作

ラウンジでは、夜間《ライティング・パイプ》が点灯。刻々と照明の色が変わっていき、その度宿泊客らが訪れ、作品鑑賞を楽しんでいました。作者のレアンドロ・エルリッヒ氏は、ホテルの改装の際に現れた無数の配管から着想を得て、亡霊のように浮かび上がらせる事でその面影を留めるというアイデアを形にしたとのこと。

日付が変わるまで見ていたら、いつの間にか他には誰もいなくなっていました。ぼんやり浮かぶパイプの明かりが、何か生き物の器官のようにも見えてきて不思議な空間でした。

完全予約制のプライベートサウナも

サウナはそれぞれ別の棟に用意されている

今回の旅の楽しみの一つでもあったサウナ。こちらも事前に予約していました。SHIROIYA THE SAUNA〈白井屋ザ・サウナ〉には、フィンランドサウナ、ベッドルームサウナ、ハーバルミストサウナの3種類が用意されていますが、今回利用したのは、ベッドルームサウナ。

小高い丘の上を登り、ネオンが特徴的な部屋の中に入ります。サウナの温度は90度ほど。いくつかのアロマも用意されており、サウナ内に設置されている木製の花瓶のオブジェクトにアロマ水を入れてロウリュウを楽しむスタイルとなっています。

室内にはBluetoothスピーカーが用意されており、好きな音楽をかけてサウナを満喫することができました。水風呂はありませんでしたが、シャワーから出る冷水は非常に冷たく、しっかりととのうことができました。

ベッドルームサウナは宿泊者のみ利用可能でしたが、フィンランドサウナとハーバルミストサウナはホテルに泊まらなくとも単体で利用ができるとのこと。白井屋ホテルのサイトから予約することができるので、日帰りサウナにもおすすめです。

〈白井屋ザ・サウナ〉

営業時間:16:00- / 18:00- / 21:00- / 8:00-
料金:¥5,000(税・サービス料込) / 1名
利用時間:80分
利用可能人数:サウナにより最大2〜4名様まで

電話:027-231-4618

詳細はこちらから

地元の人々にも愛される白井屋ザ・ベーカリー

ホテルと同じ敷地内にあるSHIROIYA THE BAKERY〈白井屋ザ・ベーカリー〉では、地元の食材をふんだんに使用したパンの数々が朝からたくさん並んでいました。私がいただいたのは、クロワッサンとレモン卵サンド。

どちらもとっても美味しかったのですが、特にレモン卵サンドは、アクセントに入った爽やかなレモン果汁と卵の相性が抜群で今までにない体験でした。写真を撮り忘れてしまったので、また買いに行きたいと思います。

隣にはブルーボトルコーヒーもオープンしていて、地元の方もコーヒーを買いに来ているようでした。2日目の朝に散歩がてらテイクアウトなんてのもよいのではないでしょうか。

〈白井屋ザ・ベーカリー〉

グリーンタワー(馬場川通り沿い)
定休日:月・火
営業時間:水〜金 10:00-18:00 土・日・祝日 8:00-18:00

専用駐車場はないため車は近隣のコインパーキングへ
食パンとバゲットのみ予約可能

電話:027-231-2020

詳細はこちらから

白井屋ホテルで新たな宿泊体験を

以上、SHIROIYA HOTELのご紹介でした。ホテル自体のサービスや空間演出はもちろん素晴らしいものでしたが、それに加えて、周辺の街並みからも前橋を盛り上げようとする意気込みや、地元の人々とのつながりも意識した設計が随所に感じられる印象深い滞在となりました。今行けば、また違った景色が広がっているかもしれません。

後編は、2日目のランチに伺ったSHIROIYA THE RESTAURANT〈白井屋ザ・レストラン〉のコース料理とノンアルコールペアリングについて書こうと思います。お楽しみに。